『神々の流竄(るざん)』
梅原 猛 著
集英社文庫 刊
この本は梅原先生の『葬られた王朝』の予備講にあたる本である。
『葬られた王朝』では、八岐大蛇は日本の越の国、『新潟』『金沢』『福井』などからやってくる中国籍の渡来人と欠かれている一方で、『神々の流竄』では、八岐大蛇とは三輪山のことで、背中に松、杉、檜がある龍とは奈良の三輪山のことだと解釈している。
また、『神々の流竄』では、出雲王朝の滅亡について、大和政権から追放された王族が、出雲に追いやられたと解釈している。
あとから書かれた『葬られた王朝』では、もともと出雲にあった王朝が、大和を征服しようとしたが、反対に大和の王朝に征服されたと解釈している。
同じ著者による同じ内容についての考察だが、結論的にはかなりの相違を見る。
これは梅原先生の着想時に書かれた本が『神々の流竄』で、
のちに現場への考古学的アプローチを重ねた結果出来上がったのが、『葬られた王朝』であると知れば納得できる。
梅原古代学の熱気あふれるこの本が、最も根幹とする意見は、『古事記』と『日本書紀』の著者は同じ人物であり、
古事記の作者とされる稗田阿礼(ひだのあれい)とは、ずばり、当時の政権保持者、藤原不比等(ふじわらのふひと)であると名言している点だ。
posted by coichi at 12:35|
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日本古代史